大気の安定判断
CAPEとは、
対流有効位置エネルギー(
Convective Available Potencial Energy)のことで、大気の安定度合いを判断する指標である。この面積が大きいときに大気は不安定であると判断出来る。
実際の状態曲線で作図してみると、交点D(LFC)と交点E(LNB)が存在しない場合がある。交点DとEが存在しなければ、CAPEも存在しないので、大気は安定であると判断できる。
CINとは、
対流抑制(
Convective inhbition)のことで、大気の安定を示す指標である。CINの面積が大きい状態では、状態曲線が「湿潤断熱線」よりも安定側にあることを意味し、対流活動が起こりにくいことになる。
対流が発生しやすい指標であるCAPEと、対流を抑制する指標であるCINとの関係で、大気の状態を次のように表現する。
ゼロ < CAPE
(CAPEが存在する) 潜在不安定
CAPE < CIN 偽潜在不安定
CIN < CAPE 真正潜在不安定
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他に関連する用語を覚えておこう。
略号だけでは覚えにくいので、英語の原文を覚えてしまった方が後々楽だと思う。
英語と言っても大したことはない。
・対流=convensation
・凝結=condensation
・高度=level
・浮力ゼロ=neutral bouyancy(浮力が中立という意味で)
LCL(交点C)は、持ち上げ凝結高度
(Lifted Condensation Level)で、飽和点を調べるために、SSI(ショワルター安定指数)の作図などで多用するポイントである。作図手順は、次の通り。
(1)点A(地上気温)から「乾燥断熱線」に沿って上方に線を引く。
(2)点B(地上の露点温度)から「等飽和混合比線」に沿って上方に線を引く。
(3)点Aと点Bからの交点が点C、すなわちLCLになる。
LFC(交点D)は、自由対流高度
(Level of Free Convensation)で、雲が出来始める最も低い高度であり、これより下に雲は出来ない。すなわち雲底高度の目安になる。作図手順は次の通り。
(1)交点Cから「湿潤断熱線」に沿って、上方に線を引く。
(2)この線と状態曲線の交点が点D、すなわちLFCになる。
(3)二つの線が交わらない場合は、LFCが存在しないことになる。(大気が安定している状態を示す)
LNB(交点E)は、浮力ゼロ高度
(Level of Neutral bouyancy)で、雲頂の目安となる高度である。これより上層は安定層なので、雲は発生しない。作図手順は次の通り。
(1)交点Dから「湿潤断熱線」に沿って、更に上方に線を引く。交点D(LFC)が存在しなければ交点Eも存在しない。
(2)この線と状態曲線の交点が点E、すなわちLNBになる。
(3)交点が存在しない場合がある。
安定した大気の状態では、LFCもLNBも存在しない例を示しておく。
下の図は、今朝(2013年3月11日9時)の輪島エマグラムだ。
茶色のラインで「乾燥断熱線」を、ピンクのラインで「等飽和混合比線」を描いて、交点であるLCLが860hPa付近であるところまで、作図した。そこから、グリーンの「湿潤断熱線」に沿って線を引いたが、状態曲線とは離れるばかりで交点など出来やしない。大気が安定状態にあることをしめしている例だ。
事実、今日の輪島の天気は降水量ゼロの晴れだった。
(2013/03/11)
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