第39回気象予報士試験 一般問5
問5:
次の各文の正誤を答えよ。
(試験の原文とは多少違います)
(a) 夏至の1日間に大気上端の水平な単位面積に入射する太陽放射エネルギー量は、北極点の方が赤道上の地点よりも多い。
(b) 海表面における直達太陽放射の反射率は、太陽の高度角が大きいほど大きい。
(c) 冬至の1日間に地球全体で受ける太陽放射エネルギー量は、夏至の1日間よりも多い。
(d) 可視光線が大気の分子によって散乱を受けるとき、波長が0.4μmの紫色の散乱係数は、波長が0.6μmの橙色光の散乱係数の約5倍になる。
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(a) |
(b) |
(c) |
(d) |
(1) |
正 |
正 |
誤 |
誤 |
(2) |
正 |
誤 |
正 |
正 |
(3) |
正 |
誤 |
正 |
誤 |
(4) |
誤 |
正 |
誤 |
正 |
(5) |
誤 |
誤 |
正 |
誤 |
解説:
(a)の問題では、出題者の狙い
(というよりも罠)に引っかからないように注意しなければならない。
太陽放射エネルギーが多いか少ないかと問われれば、太陽高度角を思い浮かべるだろう。
地球の地軸は公転軌道から23.5度傾いている。
夏至の日となれば、北極点を太陽に向けて、北半球全体が太陽放射を浴びているはずだ。
図示すればこんなイメージだ。
(この図は問題用紙にはありません)
このとき北極点の太陽高度は23.5度で、赤道上では66.5度になる。
どう考えたって、赤道の方が放射強度が強いに決まっている。
当然、(a)は『誤』だろうって。 ⇒ って、それじゃダメだよ。
冷静に考えれば、これが引っかけだって気がつくだろう。
ポイントは、問題文の、
『1日間に大気上端の水平な単位面積に入射する太陽放射エネルギー量』だ。
もっと絞り込めば
『1日間に』という行
(くだり)だ。
最大放射強度は当然赤道の方が大きいのだが、しかし、なんと、この時期、
北極点には夜がない。
やられた、と言っても、後の祭り。 北極点は、24時間同じ角度で連続的に太陽光を浴び続けるが、赤道には夜があるし朝夕は照射角度が小さくなる。詳しい計算はしていないし、したくもないのだが、24時間の累積放射エネルギーなら、夜がなくて24時間連続照射を受けている北極の方が多いだろうな。
そういうわけで
(a)は『正』
(b)は『誤』
だって、海面に直角に光が当たれば突き抜けていくけど、斜めに当たれば全反射する原理だから、角度が大きければ、反射率は少ない。
水面を見るときに、真上から見ると水底が見えるが、角度を浅くすると鏡のように反射する。
こんなイメージで捉えてもらえれば、おそらく間違えないだろう。
(この図は問題用紙にはありません)
(c)は『正』。
下図のように、冬至の方が太陽に近いことは
「日本の冬は寒いから、太陽からの距離を近くして暖めてくれる」と覚えておけば間違いない。
太陽と地球間の距離は、夏至が1.017天文単位に対して、冬至が0.983天文単位だから、わずかながら距離が近い分だけ「地球全体で受ける太陽放射エネルギー量は」多い。
(この図は問題用紙にはありません)
ちなみに、天文単位とは、太陽までの平均距離で1億5千万キロである。
(d)は『正』
0.6μmは0.4μmの1.5倍だ。
レイリー散乱では、散乱強度は波長の4乗に反比例する。
計算機使用が禁止されているので、1.5の4乗の正確な計算など出来ないから手計算で、1.5×1.5=2.3 2.3×2.3=5.3とする。5倍に近いから『正』と見てよいだろう。
(ちなみに、1.5の4乗をきちんと計算すると、5.06である)
正解は選択肢(2)の「正誤正正」だ。
(2013/06/12)
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