第39回気象予報士試験 一般問6


問6:
 角速度Ωで自転している地球に固定された座標系上では、北半球の北緯φの地点の速さVで水平移動する単位質量の空気塊に働くコリオリ力の水平成分の大きさは(a)となる。コリオリ力は移動方向と直角に働くため、これ以外に水平方向に働く力がないときにはこの空気塊は水平円運動を行う。この円の半径をrとすると、この空気塊には(b)で表される遠心力が外向きに働く。この遠心力がコリオリ力と釣り合うことを利用して、円周の長さを速さで割ると、円運動の周期は(c)となる。この円運動は慣性振動と呼ばれる。
 この周期から、北緯30度の地点で北向きにゆっくりと水平移動を開始した空気塊は、その6時間後には(d)向きに移動していることになる。

(a)
(b) (c) (d)
  (1)  2ΩVsinφ  V/r  πΩsinφ  南
  (2)  2ΩVcosφ  V2/r  πΩcosφ  東
  (3)  2ΩVsinφ  V2/r  π/(Ωsinφ) 北東
  (4)  2ΩVcosφ  V/r  π/(Ωcosφ)  南
  (5)  2ΩVsinφ  V2/r  π/(Ωsinφ)  東

解説:
コリオリパラメーターは、2Ωsinφであると、気象予報士試験の参考書なら必ず書いてあるはずだ。
これに速度を掛けると水平成分の大きさになるし、2ΩVsinφなどと、丸ごと覚えている人もいるかもしれない。
と言うわけで、考えるまでもなく、(a)は2Ωsinφである。
理屈を知りたい人は、専門書を読んで研究してくれ。
また、遠心力は、速度の2乗に比例して半径に反比例すると言うのも、常識的に知っているはずだ。いや、気象予報士を受験するなら知っていて欲しい。だから(b)はV2/rである。
ここまでは、多くの皆さんが到達できたことだろう。  =*^-^*=にこっ♪

(a)
(b) (c) (d)
  (1)  2ΩVsinφ  V/r  πΩsinφ  南
  (2)  2ΩVcosφ  V2/r  πΩcosφ  東
  (3)  2ΩVsinφ  V2/r  π/(Ωsinφ) 北東
  (4)  2ΩVcosφ  V/r  π/(Ωcosφ)  南
  (5)  2ΩVsinφ  V2/r  π/(Ωsinφ)  東
間違いの選択肢を消すと、(3)と(5)が残っている。
改めてみると見ると(c)は同じなので、(d)が「北東」か「東」かの選択になる。

解析を進めてみよう。
さて、問題は、つぎの課題だ。
周期を求めるために、「円周の長さを速さで割る」ときた。
円周って何だ? 速さって何だ?
図で説明しよう。この問題は、実は、こんなイメージの動きなのだ。

半径rの円だから、円周の長さは(直径×円周率)すなわち2πrって、小学生のときに習ったよね。
速さってのは、「北緯φの地点の速さV」って与えられているからVだ。
ここまで、問題ないよね。
だから、周期(以後周期をfと言うことにする)は、円周の長さを速さで割るのだから、f=2πr/V というわけだ。
これが、課題(c)の答えだ。
え、そんな選択肢は、ないって? 
あ、そうか、困ったな。 じゃぁVを消そうよ。 
どうやって?
ちょっとは、考えてよ。 ヽ(´〜`; ォィォィ
「この遠心力がコリオリ力と釣り合うことを利用して」ってヒントが書いてあるじゃん。
つまり (遠心力)V2/r=2ΩVsinφ(コリオリ力) ってことだよね。 この式を変形すると
V=r2Ωsinφとなる。
先の周期の式 f=2πr/Vに代入すると 
f=2πr/(r2Ωsinφ)=π/(Ωsinφ)となり、rと2が消えて選択肢の中で見たような形になってきた。
そう、(c)はπ/(Ωsinφ) と言うわけだ。
ここまでくれば、出来たも同然だ。 (; ̄Д ̄)なんじゃと?

地球は24時間で一周するので角速度は、Ω=2π/24hrである。
2πはラジアンで360度のこと。これを一日24hr割っただけだよ。
北緯30度だからsinφ=sin30度=1/2である。
ここで、(c)の式π/(Ωsinφ)にこれらの因子(Ω=2π/24hrとsinφ=1/2)を代入してみる。
周期f=π/(2π/24hr×1/2)=π/(/24hr×1/2)となる。
2とπが消えてしまうので、f=24hrが残り、24時間で一周する周期であることを示している。
つまり360度を24時間で一周する速度で円形に振動しているということだ。
問われているのが6時間後だから、一周24時間の4分の1であり、90度進んだ位置に相当する。
上の図で、北向きに動き出して、90度進んだ地点と言えば東向きになる。
という長い説明を終えて、(d)は東となるのであった。
正解は選択肢(5)「2ΩVsinφ、V2/r、π/(Ωsinφ)、東」と言うわけだ。

これは、まともに考えたらすごく難しい。試験会場では頭が混乱して解けないだろう。
ついでに、地球上のほかの地点についてもちょっと考えてみた。
緯度を変えるとsinφが変わるので、sinφが1になる北極点付近と、sinφが1/4になる北緯14.48度付近、及びsinφが1/8になる北緯7.18度付近の、24時間で動く周期を図示してみた。

当たり前だけど、コリオリ力の影響が小さい低緯度ほど回転が遅いことが分かる。
もしも、問題が北緯14.48度だったら、6時間後の方向は北東だが、そんな面倒な計算問題は出ないよ。

逆に、北極点付近では、1日で2回転もしちゃうんだね。
 (2013/06/12)

読者の声:
マンボウさん(2013/03/14)
試験で、計算結果はすべて合っていたんですが、最後、試験問題の「( )向きに移動していることになる」はかなり誤解を招くような気がします。
90度回転するわけですから、元の点と比べて北東方向ですが、確かに6時間後には東向きの速度ベクトルを持っています。
いまだに納得がいかないです...どうなんでしょうかね...
なるほど、おっしゃりたいことがやっと理解できました。図示すればこんなイメージですね。

6時間後には、スタート地点から見れば、(経路はともかくとして)北東向きに移動している。(移動を完了している)と、解釈できますね。
この解釈なら、選択肢(3)が正解になります。
一方、完了形ではなく、現在進行形なら、「東」に移動しようとしているともとれる。
日本語として、どう捕らえるべきかあいまいですね。
言われてみれば、どちらとも取れる文章なので、選択肢(3)(5)の両方正解にすべきでしょう、って。
そうすると、簡単な設問(a)(b)が分かれば、後半の面倒な計算(c)(d)は関係なくなってしまいます。
センターの発表は、正解は(5)としているだけで注釈がついていないので、おそらく、そうはなっていないのでしょうね。
どう表現すれば、誤解がないでしょうか。
「その6時間後には(d)に向かって動いていることになる」でしょうかね。 by 北上大(2013/03/15)
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