第39回気象予報士試験 一般問10


問10:
次の1月の緯度高度分布図に示した[a][b][c][d]点の風向が、東風か西風か答えよ。
なお、選択枝は下の(1)〜(5)である。
[a][b][c][d]の順に
(1)東西東西、(2)東西西東、(3)西東東東、(4)西東西西、(5)西西西西

(問題文は著しく省略しており、図は出題図そのものではありません)

解説:
中層大気と言えば、温度分布図が有名だが、この問題は温度ではない。
風だ。
中層大気の風について、分かる範囲で知識を絞り出してみると、
1月だから、南半球が夏半球(左側)で、北半球が冬半球(右側)に相当する。
〔夏半球の上層で東風〕は有名なので[b]=東を示唆しているようだ。
〔北半球の中緯度では偏西風〕は[c]に相当するので[c]=西だと思う。
それ以外の[a][d]は、まったく分からない。
実は、この段階で、選択肢は(4)に絞られてしまったのだ。
だから、[a]と[d]は知らなくても正解にたどり着いているのだった。

それはともかく、一般知識の教科書とも言われている「一般気象学(第2版)」の254ページにこんな図があった。

(原図には着色はありません)
この図と、問題の図を重ね合わせてみるとこうなる。

[a][b][c][d]の位置に、ものの見事に、西東西西が当てはまった。
当然ながら、正解は選択枝(4)西東西西である。

数少ない知識で絞り出した[b]=東、[c]=西の選択枝で決まるということは、[b]と[c]さえ正しく理解していれば他はどうでも良いという出題者の思し召しなのだろうか、それともたまたまのラッキーなのだろうか?
  (2013/06/12)

読者の声:
hendevaneさん(2013/05/06)
問題には「温度風の関係を考慮して, [a]〜[d]における高層風東西成分の…」とあります。温度風を考えれば答えられるということのようですが、私にはわかりません。どうなのでしょう?

北上大(2013/05/07)
hendevaneさんからの指摘で、問題文を読み直してみると、「温度風の関係を考慮して」と指定されており、単純に推定する問題ではありませんでした。 正解は選択肢(4)で良いのですが、単純に当てるだけではなく、なぜそうなったかの理由が必要です。
問題文はこうでした。
図は地表面から高度 80km までの 1 月の平均気温 (K) の緯度高度分布であ
り,図中の[a] 〜[d] の文
字とそれに併記された□内の数値は,それぞれ同月の高層風の平均東西成分
の極値の位置とその大き
さ ( 絶対値:ms-1) を示している。温度風の関係を考慮して,[a]〜[d]の各点にお
ける高層風東西成分
の極値の向きの組み合わせとして正しいものを,下記の@〜Dの中から一つ選
べ。

「温度風の関係」については、一般知識の教科書的存在である「一般気象学【第2版】」に次のような記載がありました。
P146 上段
 このように温度の水平傾度があるために地衡風が高度とともに変化していることを温度風の関係という。北半球では高温の部分を右に見るようにして地衡風は高さとともに増大する。対流圏内では南北方向の温度傾度は中緯度に集中しているので、中緯度地帯の上空で偏西風が最大となるわけである。
P253中下段
 中層大気では高度約90kmまで夏半球では全域東風、冬半球では全域西風というきわめて単純な分布をしている。〔中略〕図9.1の温度分布図と比較してみれば、温度風の関係、すなわち北半球では高温域を右手に見るように温度風は吹き、南半球では逆に左手に見るように吹くという関係が満足されていることが分かる。
文中の図9.1は、この問題の出題図とそっくりなものです。
北上大(2013/05/11)
温度風の関係と言う表現ですが、「一般気象学【第2版】」145ページを読み直してみると、地衡風のことを言っています。地衡風は気圧傾度がある場で等圧線(等高度線)に沿って吹く風です。
大気に温度勾配があれば、高温領域が高気圧になり、低温領域が低気圧になるため、気圧傾度が発生し、それに伴って地衡風が吹く。つまり気温傾度に伴って吹く地衡風を、温度風の関係と称しているようです。
問題の図から気圧傾度を読み取ることは出来ませんが、地表からの気温の積算値で代用する試みをしました。
問題図の[a][b]点は、南緯40度付近なので、これをはさむ領域として南緯25度と南緯55度を定めて、高度5kmごとの気温を読み取りました(5度刻みの概算です)
南緯55度の地表気温は280K、5kmでは255K、10kmでは230Kです。
次に、地表から気温の積算値を計算します。
 ・南緯55度の地表は280Kです。
 ・高度5kmでは、地表気温280K+5km気温255K=535K
 ・高度10kmでは、5kmの積算535K+10km気温230K=765K
と言う具合です。地上80kmまで積算すると4110Kとなります。
これと同じことを、南緯25度でも計算して地表からの積算気温を算出します。
南緯55度と南緯25度で、それぞれ同じ高度の積算気温の差を求めれば、気圧傾度に似た傾向を示すのではないかと考えました。
北緯についても、北緯55度と北緯25度の差を求めました。
赤道側をプラスにして各高度における差を図示したのが下の図です。
正の値(プラス)は赤道側が高く、負の値(マイナス)は赤道側が低い数値を意味しています。

北半球では気温が高い領域を右に見て吹きます。
上の図では北半球では、全領域で赤道側が高いので西風が吹くことになります。
逆に、南半球では赤道側がプラスなら西風、マイナスなら東風になります。
その様子を、薄いグリーン(西風領域)と 薄いピンク(東風領域)に色分けしてみました。
5℃刻みの概算なので、ぴったり同じにはなりませんでしたが、出題点[a]〜[d]の点付近で、極大値が現れ、地衡風の方向とも一致するので、考え方は間違っていないような気がします。
でも、これだけのことを、短い試験時間の中で想定するのは無理です。
やはり、元からある程度、知識として知っておく必要がありますね。

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