湿潤空気を持ち上げる


湿潤空気とは、水蒸気が飽和して、水分が凝結してい状態の空気である。
風呂場で湯気がモンモンと立ち込めて、窓ガラスがびしょびしょに濡れているイメージだ。
乾燥空気塊を断熱的に持ち上げたときの温度と圧力の挙動を示すのが「乾燥断熱線」であることを、前項に書いたが、水蒸気で飽和して、びしょびしょの気体に関する挙動を示したのが「湿潤断熱線」である。
邪魔になるので、「乾燥断熱線」と「等飽和混合比線」を消して、300Kの湿潤断熱線に着目したのが下の図である。

ここで対象とする空気塊は、水蒸気が飽和してびしょびしょであり、凝結して水滴を持っている。
このラインは、未飽和の乾燥空気には使えない。必ず、飽和してびしょびしょの空気に適用するのだ。
この湿潤空気塊を断熱的に持ち上げていくと、やはり、温度が低下して体積が膨張する。しかし、気温の下がり方が、「乾燥断熱線」よりも緩やかである。言い換えれば、グラフの線が立っているのである。
前項で説明したように、地上で300Kの乾燥空気を500hPaまで持ち上げると、気温はマイナス27℃まで低下したが、湿潤空気では、3℃と氷点まで達していないのだからずいぶんな差である。
乾燥断熱変化では1000mごとに10℃の気温低下だったが、湿潤断熱変化では、およそ4.5℃と半分以下である。
これは、水蒸気が凝結するときに放出する潜熱(凝結熱)によって加温されるために、気温低下が抑制されるからである。
「湿潤断熱線」は「乾燥断熱線」を何本もまたいでいる。上図に部分的に示したように、800hPa付近で310Kを超え、680hPa付近で320K、560hPa付近で330Kの「乾燥断熱線」を越えて、温位が増加していることを示している。これは、先の説明のように、凝結熱を放出することにより、温位を高めているからだ。

水蒸気を含む空気塊を断熱的に上昇させ、すべての水蒸気が凝結し水蒸気圧がゼロになった時に空気塊が示す温位を相当温位と定義出来る。
湿潤空気を断熱的に上昇させると凝結した水が系外に放出(雲になるとか)されて、空気塊は乾燥してゆく。やがてすべての水分を絞り出して水蒸気をまったく含まない乾燥空気になる。ということは、最終的には「乾燥断熱線」と同じことになるはずだ。
この様子をエマグラム上で図示すると、湿潤断熱線が乾燥断熱線に漸近していく様子が伺える。
たとえば、290Kの湿潤断熱線を上方にたどっていくと、下図の赤い丸で示した400hPa付近で、322Kの乾燥断熱線に漸近することが分かる。

グリーンのラインで指定した空気塊の水分をすべて凝結させたときにの温位322Kが、この空気塊の相当温位である。

温位〔θ〕と相当温位〔θe〕の間には、θe=θ+2.8wの近似式が成り立つ。
wは混合比である。
確認してみよう。
  上のグラフで800hPaの点(紫色の丸)に着目すると、
    温位〔θ〕=300K(茶色の線)
    混合比〔w〕=8g/kg(紫色の線)
    θe=300+2.8×8=322K
  となり、ほぼ近似式が成り立つことが確認できる。
他の点でも同じことだ。
    600hPaでは、θe=311+2.8×4.4=323K
    1000hPaでは、θe=290+2.8×12=324K
本来なら、すべて同じ322Kになるべきだが、近似式であることと、上のグラフがあまり正確でないので、1〜2Kほどバラついているが、ほぼ一致していると見て欲しい。
この式からも分かるように、混合比がゼロのとき(水分ゼロの乾燥空気)に、相当温位と温位は等しいが、いかなる場合でも相当温位が温位よりも小さくなることはない。
(2013/03/07)

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