第39回気象予報士試験 一般問4
問4:
図のように、雲の中に半径rの小さな水滴が一様に分布して鉛直に下向きに速さwで落下しており、その雲の中をrよりも十分に大きい半径Rの水滴が同じく鉛直下向きに速さW(W>w)で落下している。大きな水滴が小さな水滴を併合して雨粒に成長するとき、大きな水滴の時間当たりの質量増加量を表す式として最も適切なものを、下記の(1)〜(5)の中から一つ選べ。
ただし、雲の中の小さな水滴の数密度をn、水の密度をρとする。
解説:
いわゆる併合過程の模式図を理解することは必要だが、こんな計算式に何の意味があるのだろうか?
ともかく、考え方は次のようなものかな。
1)一定時間に、小さな水滴を何粒併合できるかを考える。
2)一粒の体積を計算して、小さな水滴の一粒の質量を求める。
3)粒数と質量を掛けて総質量を求める。
「数密度」という聞きなれない用語が示されているが、これが一つのポイントである。
数密度は
単位体積あたりの対象物の個数を表す物理量であるから、基準となる体積に数密度nを掛けると個数になることを確認しておこう。
1)一定時間に小さな水滴を何粒併合できるか。
基準になる一定時間の体積を求めるために、まず、大きい水滴の断面積が必要だ。
円の面積は半径×半径×円周率というヤツだからπR
2である。
一定時間における大粒と小粒の移動距離の差はW-wなので、基準になる空間の体積は、πR
2(W-w)である。
何粒が併合されるかは、この体積に数密度のnを掛けて、nπR
2(W-w) となる。
2)小さい粒の一粒の体積は(4/3)πr
3で、水の密度がρなので、一粒の質量は、ρ(4/3)πr
3になる。
3)1)と2)を掛けると
nπR
2(W-w)×ρ(4/3)πr
3
=(4/3)π
2nρr
3R
2(W-w)となり
正解は(3)である。
詳細な計算をしなくても、次のような思考でも正解にたどり着くことが出来る。
イ)題意から大きい水滴の体積は関係ないなく、断面積がポイントであることに気がつけば、R
3が除外できる。これで
(2)(5)が消えて、(1)
(2)(3)(4)
(5)に絞り込める。
ロ)小さい粒の体積を問題にするのだから、r
3が必要だと気がつけば、
(1)(2)を捨てて、
(1)(2)(3)(4)
(5)に絞り込める。
ハ)速度の差を問題にするのだから(W-w)は必須だろう、少なくともwが入っていない式を除外しよう。
で、
(1)(2)(4)を除くと、
(1)(2)(3)
(4)(5)に絞り込める。
こうして、チェックしてゆくと、ご覧のように
(3)しか残らないはずだ。
順番に整理すれば、どうということもないのだが、緊迫した試験会場で数式を見ただけでパニックになる人もいることと思う。
( ̄□ ̄;)ギョッ
あせらないで、式の意味を考える冷静さが重要だ。
(2013/06/12)
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