第37回気象予報士試験 一般問2
問2:
乾燥空気の上昇に伴う温度変化について述べた次の文章の空欄 (ア)〜(ウ) に入る適切な数式の組み合わせを,下記の(1)〜(5)の中から一つ選べ。
(平均密度は本来上線で示しますが、表示できないので、変則的ですが、ここでは下線の
ρで表します)
乾燥空気塊が微小高度ΔZ だけ上昇したときの気圧変化量は,周囲の大気の密度を
ρ,重力加速度をg,乾燥空気の気体定数をRdとすると,ΔP = (ア)となる。
単位質量の乾燥空気塊に対する熱力学第 1 法則の式は,空気塊に加えられる熱量をΔq,空気塊の温度変化量をΔT,空気塊の密度をρ,乾燥空気の単位質量あたりの定圧比熱と定積比熱をそれぞれ Cp と Cv で表すと,Δq = (イ) - ΔP/ρとなる。
これら二つの式からこの空気塊が断熱的に上昇したときの温度変化率は,ΔZ が微小なのでρと
ρの違いを無視すると,ΔT/ΔZ = (ウ) となる。
解説:
(ア)は、静水圧平衡の式
(あるいは静力学の式)として有名なので、
受験者なら知っていて当たり前だし、静水圧ΔPが空気の重さであることを理解していれば、
〔密度×重力加速度×高さ〕で計算できることが分かると思う。
〔
ρgΔZ〕か 〔-
ρgΔZ〕かの符号については、高度を上昇したときの気圧変化量だから気圧は減少するので、
(ア)は-ρgΔZである。
「一般気象学【第2版】」の44ページ参照
(イ)は、熱力学第 1 法則を指定しているので、ΔQ=ΔU+ΔWを示している。
すなわち、気体に与えた熱量Qは、内部エネルギー(ΔU)と仕事量(ΔW)に分かれて作用する、具体的に言えば、(昇温)+(膨張)のエネルギーである。
上の式を状態方程式など、いくつかの公式を使って変形すると、次のように二つの式で表される。
この際、語呂合わせ呪文で、まとめて覚えてしまおう。
定積比熱を使った式
ΔQ=CvΔT+pΔα (αは比容、すなわち1/ρを示す)
定圧比熱を使った式
ΔQ=CpΔT-αΔP
「一般気象学【第2版】」の52ページ参照
与えられた式 Δq = (イ) - ΔP/ρ の〔1/ρ〕を比容αに置き換えれば、定圧比熱を使った式そのものである。したがって、
(イ)はCpΔTである。
ここまでで、選択肢は(1)に決まってしまったので(ウ)は〔-g/Cp〕でなければならない。
ともかく、検証してみよう。
(ウ)は、(ア)と(イ)の式を解けば良い。
(ア)式より ΔZ=ΔP/(-ρg)
(イ)式より 断熱変化なのでΔq=0として、ΔT=ΔP/(ρCp)
ΔT/ΔZ=ΔP/(ρCp)/(ΔP/(-ρg))=-g/Cpとなる。
ゆえに、
(ウ)は-g/Cpである。
正解は選択肢(1)である。
(2013/03/25)
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